まず、"ケルト”というのは、国そのものの名ではない。 紀元前600年ぐらいに、古代ギリシア人たちが西方ヨーロッパに住むインド-ヨーロッパ語系の先住民族を『ケルトイ(よそ者)』と呼んだことに由来する言葉である。 早い話が、先住民族のことで、現代では、彼らのことも、彼らの文化も"ケルト”と呼ばれているということだ。 かつてはヨーロッパの中・西部で栄えた民族だが、現在はフランスのブルターニュ地方、アイルランド、英国のウェールズやスコットランドなどに残っている。 自然崇拝の多神教であり、独自の文化を築いたケルトは、文字を使わなかったといわれており、歴史的な部分を見ても、いまだに判っていないことが多い。 これは彼らの音楽にもいえることである。 ケルト文化に詳しいひとであれば、彼らの音楽は「リズミカル」「どことなく懐かしい感覚になる」といった印象を受けるだろう。 もしイメージが湧かないというひとは、ショッピングモールなどにある『無印良品』というお店のBGMを思い浮かべてみてもらいたい。 あのどことなく情景と物語が浮かぶ、軽快で豊かなリズムと音色。 それらはすべて、口承であったといわれ、楽譜が存在しないらしい。 それほどまでに謎に満ちたケルト音楽だが、なぜか国内外を問わずに認知されつつある。 原因は音楽産業によるものなのだが、あまりそのあたりの薄暗そうな話に関しては、割愛したいと思う。(長くなりそうなので)
さて、おおよそケルトに関してはご理解頂けただろうか。 音旅では、そんな謎めいたケルト音楽のなかでも、『ケルティック・ロック』をご紹介したい。 ケルティック・ロックは、元を辿れば70年代、ハードロックの王者であるレッド・ツェッペリンやディープパープルにも垣間見えるのだが、今回は現代のケルティック・ロックに焦点を当てよう。
〔ELUVEITIE - A Rose For Epona〕https://www.youtube.com/watch?v=_1lXdLus2WIイントロの甘美な笛の音色に被さる重厚なギターとベースが印象的であり、女性ボーカルのエモーショナルな声音が儚い。 〔ELUVEITIE - The Call Of The Mountains〕https://www.youtube.com/watch?v=-w2m-TeLi6Iバグパイプやハープ、バイオリンを使うエルヴェイティはメンバー編成を幾度も繰り返しているが、ほぼ常に8人という大所帯。 2014年6月には初来日公演を果たしており、今後の活動が非常に気になる。
〔LYRIEL - Paranoid Circus〕https://www.youtube.com/watch?v=y_N3umQUhssこちらはヴァイオリンだけでなく、チェロも登場する。 ふたりの女性ボーカルが非常に耽美な、ゴシック要素もプラスされたバンドである。 どこか幻想的で切なさが散りばめられているのが美しい。
〔Wolfstone - Quinie Fae Ryhnie Live in Ortigueira 2009〕https://www.youtube.com/watch?v=m21Sd5NWaK0こちらはインストゥルメンタル。 思わず踊りだしたくなるようなリズムと、それぞれの楽器の音色が濃淡あるハーモニーを生んでいる。 前二者に比べ、重たさは無く、ロックのジャンルも異なるが、とても耳に心地のよい時間を過ごせることだろう。
耳に心地よいといえば、これはロックではないが、みなさんが一度はCMや映画などで聞いたことのある、この曲もケルト音楽がベースだ。 〔Enya - Wild Child〕https://www.youtube.com/watch?v=_wM7A6Eht7s
**著者紹介** 森永 睡(もりなが ねむ) そろそろ夏ですか。もう夏ですか。 次回は帰国します。
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