『ツバメとハムナプトラと疲れの話』
3歳離れた兄の死因を聞いた時、俺は己の耳を疑わずにはいられなかった。
「ツバメが頭に突き刺さって死んだ。」
ツバメだ。
あのツバメである。
真夏のカンカン照りのコンクリート地獄でアルバイト中の俺は、母からの電話をとって数十秒、行ったこともないペルーの港町の蚤の市でいきなり巨大なカニに足を挟まれているような感覚に陥り、そして我に返った。
13年前のことだ。
適当な作り話は置いておくとして、 アホかと思うほど本土最南端にあるのが鹿児島である。
そこに住んでいる。
暑い。
完全に暑い。揺るぎなく暑い。 ポエムにできない暑さである。
夏が暑いのは当たり前だが、例年の如くシベリアに住みたい。
シベリアに住んでイヌイットと暮らし、オオカミの毛皮のフワフワした帽子を被りたい。 そして「寒いね」と話しかければ「寒いね」と答える人のいるあたたかさがあれば俺はもう他には何も要らないのである。
それはさておき
今俺はこの文をとあるバーの一角で書いている。
とあるバーの一角で書いていれば相当シブいイメージだが、現実はそううまい具合にシブくはならない。
奥の部屋で飲んでいる若者グループは合コンの盛り上りが頂点に達しコールが連発しているし、カウンター越しに見えるモニターからはハムナプトラが字幕で流れている。
字幕のハムナプトラがバーで流れてるのはヤバい。ハムナプトラのカメラワークはなかなかにせわしないので、これが酔う。ビール2杯しか飲んでないのに相当に目が回るのだ。
じゃあハムナプトラを見なければいいじゃないか、という話なのだが、目の前の流し台では先ほどから美人の姉ちゃんがコップをせっせと洗っているのである。
非力な俺は哀しくも、ハムナプトラを見るしかないのだ。
ああ疲れた。
相変わらず「疲れた」が口癖の日々だ。
こんな下らん作文をしてる間にもどんどん俺の体力メータはちょっと速い原付きくらいの速度でグングン減り続けている。
"疲れ免税’’ とか "疲れ補助金’’ というのがあればそうとう良い暮らしができるはずだ俺は。うん。
しゃぶり続けてたメントス(グレープ味)が溶けきったので本日はもう寝る。
皆さん、よい悪夢を。
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